酸味

春から学ぼう!“酸味”のコト 第5回(全5回)」

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【まとめ】

 人はなぜ、酸っぱさをおいしく感じるのでしょうか。それは、酸味の正体である酢酸やクエン酸などの有機酸が、人体にとってエネルギー代謝を促進する有益なものだから、と考えられます。

 

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 有機酸には、摂取した栄養物を効率よく分解する働きがあり、消化・吸収を促進し、栄養物の利用効率を高めてくれます。

 また疲労の原因となる、筋肉内に溜まった乳酸を取り除く作用もあります。気温が高くてエネルギーを消費しやすいときや、激しいスポーツをして疲れたとき、酸っぱいものを欲しくなるのは、このような理由からです。

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食欲がないときでも、酸っぱい梅干しやさっぱりした酢の物で食が進みます。

酢には食欲を増進する働きがありますが、それだけでなく、血中コレステロール値を下げ動脈硬化の予防に効果があることや、血圧を下げる、食後の血糖値を下げるなど、健康維持のためにプラスの効用がいくつもあることが報告されています。

また、酢とカルシウムを一緒にとるとカルシウムの吸収率を高めることが報告されているほか、酸味の刺激が緊張を緩和しストレスを和らげる作用を持つともいわれます。

これだけの効果のある酢。

うまく活用して、健康に役立つ食生活をおくりたいものです。

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春から学ぼう!“酸味”のコト 第4回(全5回)」

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酢には酸味や風味だけでなく、食品の保存性を増したり、変色を防止したり、たんぱく質を固めるといった多くの性質があり、調理の場面でさまざまに活躍をしています。

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酢の持つ強い殺菌力は大昔から知られ、古代バビロニアですでに食品を長期保存するためにピクルスが作られていたといわれます。

酢の中では食中毒菌は5分で死滅。2%の酢を添加したおにぎりには8時間の防腐効果が認められるといった研究報告もあります。酢を7~10%加える鮨飯ではさらに保存がきくことになります。

酢の強い抗菌作用は、酸とともに主成分の酢酸の働きが微生物の活動や繁殖を防いでいるといわれます。

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魚を酢洗いすると、表面についた細菌の増殖を抑制するとともに、魚の臭み成分であるアミン類に酸が反応して臭みも消えます。魚を煮るとき酢や梅干しを入れるのも生臭さを消すためですが、酢には肉や骨を柔らかくする働きもあります。

コハダやサバなど魚を塩じめしてから酢に浸す「酢じめ」では、魚の肉質に独特の食感が生じます。この「酢じめ」は、たんぱく質が酸によって変性するとともに、酸性酵素がたんぱく質を分解することによるものです。ただ、酢だけでは身くずれしてしまうので、最初の十分な塩じめが欠かせません。

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野菜や果物に含まれる物質(ポリフェノールやチロシン)は酵素の働きで酸化し、褐変する性質がありますが、酢でpHを下げれば酵素の働きを抑えることができます。

酢は味としての酸味を楽しむだけでなく、料理の下ごしらえにもさまざまな働きをする優れものの調味料なのです。

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春から学ぼう!“酸味”のコト 第3回(全5回)」

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 味加減のことを「塩梅(あんばい)」といいますが、これは塩味と酸味(梅の酸味)のこと。古来より、酸味と塩味との調和がおいしさの大切な要素だったのです。

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酸味と塩味や甘味はお互いの味を和らげる効果があり、調味の隠し味として酸味(酢)は重要な役割を果たします。

実際には砂糖が多量に使われている料理でも酸味が加わることで食べやすくなり、逆に酸味が強い料理に甘味が加わると酸っぱさが和らぎます。

甘酸っぱい料理は、お互いの味の魅力を引き立てあっているのです。また、多くの清涼飲料水では、甘味とともに酸味がつけられ、清涼感を醸し出しています。

 

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 酸性の度合いを表すものにペーハー(pH)があります。7が中性、7より小さければ酸性、大きければアルカリ性です。

 

どんな食品にもそれぞれに固有のpHがありますが、一般に、おいしく感じられるのは弱酸性のpHが4~6の間で、pH8になると味がぼやけ、pH3になると酸味を感じるようになるといわれています。

酢のpHは2.5~3.5、レモンやスダチやカボスなど料理に使われる酸味の強い柑橘類の天然果汁もpHは2.5前後と強い酸性です。これらを料理に少量加えることで、料理全体のpHが下がり、驚くほど味がしまって感じられるのです。

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ところで、食品にはさまざまな色素が含まれていますが、天然色素の多くは酸やアルカリによって色が変化し、食品の見た目に大きな影響をおよぼします。

梅漬けで使うシソの葉は梅酢で真紅になり、ミョウガやショウガを甘酢に漬けておくと美しいピンク色になります。これはアントシアンという色素が、アルカリだと青色、酸性だと赤色になるためです。

ほとんどすべての野菜に含まれるフラボノイドという色素は、アルカリ性では黄褐色、酸性では白色になります。カリフラワーを茹でるときに酢を入れると白く茹でることができます。

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春から学ぼう!“酸味”のコト 第2回(全5回)」

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 酢の主成分には酢酸、そのほかクエン酸やリンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸など多くの有機酸が含まれています。レモンや梅干しの主成分はクエン酸で、これらの有機酸類が独特のすっぱさ、酸味の正体です。

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酢に最も多く含まれる酢酸は、酢酸菌によりアルコールが酸化されて生じます。酢は酒の歴史とともに誕生したといわれ、酒の原料になるような糖質を含んだ食品であれば、酢の醸造も可能です。英語のヴィネガー(vinegar)は、フランス語のビネーグル(vinaigre)が語源で、vinはワイン、aigreはすっぱい、つまり「お酒がすっぱくなったもの」という意味なのです。

世界各地にさまざまな酒があるように、それぞれの酒に対応して酢が発達しています。日本では米から作った米酢が一般的ですが、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどワインの産地ではワインビネガーが、ールの本場イギリスやドイツでは麦芽汁から作るモルトビネガー(麦芽酢)が、アメリカではシードルビネガー(りんご酢)が中心です。 

 

日本では近年になって脚光を浴びるようになったバルサミコ酢は、ワインビネガーと同じくぶどうが原料ですが、濃縮果汁を用い数年の樽熟成によって生まれる独特のフルーティな芳香とまろやかな酸味や甘味が特徴です。

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どの酢にも共通する主成分の酢酸は、揮発性がありそれ自体に香りがあります。さらに酢の原料となる食品の酢酸以外の有機酸やアミノ酸の含有量の違いにより、できあがった酢自体の風味は大きく異なってきます。それぞれの風味の特徴を生かして、料理によって使い分けられています。

酢は塩や砂糖と同じ基本調味料の1つですが、これらと大きく異なることは、特徴的な豊かな香りがあることです。

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「春から学ぼう!“酸味”のコト 第1回(全5回)」

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 独特の酸味がさわやかな食味を生み出す酢は、その多様な働きから調理の過程でさまざまに活用されていますが、最近ではその健康効果が注目されています。酸味と酸味調味料「酢」が作り出すおいしさの世界を探ってみました.

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 伝統的な日本料理の「なます」は魚介類などを刻んで二杯酢などで和えたもの。海外でもすっかりポピュラーな寿司は、魚介類と酢飯との組み合わせです。

長く肉食の習慣のなかった日本では、魚介類が一番のごちそうとして尊ばれました。そのため、魚介類の生臭さを消したり、保存性を増すなどのさまざまな働きを持つ酢が、魚介類の加工や調理の際に経験的に利用されてきたのです。

また、酢は酢味噌や二杯酢、三杯酢、甘酢、土佐酢など、さまざまな合わせ酢にすることよって、淡白な味の日本料理に多様な風味を添えてもいます。

 

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 西洋でも、ヴィネガー(酢)は、スパイスや塩と並んで魚や肉料理に重要な役割を果たしている調味料であり、古くからピクルスなどの保存食に用いられています。また、サラダドレッシングをはじめマヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソースなど、各種ソース類のベースにも使用され、酢の酸味が味にアクセントを与え、保存性を高めてもいます。

洋の東西を問わずに幅広く調理に用いられている酸味調味料の酢ですが、スダチやカボスなどの果実の汁や梅干しの酸味なども多くの料理で利用されています。

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「酸っぱい!」が長続きしないのはなぜ?

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もうすぐ、クリスマス。 22_a

プレゼントはもうお決まりでしょうか。

私は、珍しい調味料のセットを検討しています。

今回は、『酸味』についての、お話です。

(画像は、アプリコットとオレンジのビネガー。最近のお気に入りです。)

 

酸っぱい味は、長続きしないことが知られています。

酸っぱい味の酸、つまり水素イオンですが、

唾液にはこの水素イオンを減らす働きがあります。

唾液に含まれている重炭酸イオンがその働きを担っていますが、

これを水素イオンの緩衝作用といいます。

酸っぱい食べ物の代表、

梅干し、レモンなどを想像するだけでも唾液が出てくるのは、

条件反射とよばれる現象です。

以前食べた酸っぱい味を覚えているために、

考えただけでも唾液が出てしまうのです。

実際に酸っぱい食べ物を食べなくても、

口の中では酸っぱい味を弱める準備が出来ているというわけです。

実は、唾液に含まれる成分は、

出てくるスピードによって変化することが知られています。

食事中の唾液の重炭酸イオンの濃度は、

食事をしていない時よりも、

なんと約五十倍にも増加しているのです。 反射的に、「酸っぱい」を中和しようとする仕組みが、

酸味を長続きさせない理由だったのです。