甘味

「今さら聞けない“甘味”のコト 第4回(全4回)」

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「あまり甘くなくておいしい」という言葉が、ケーキやデザートなどに対するほめ言葉としてすっかり定着しています。最近は甘さ控えめがトレンド、それを裏付けるように、上白糖、グラニュー糖などの砂糖類は、市場規模の縮小傾向が続いています。 31_a

一方、家庭用甘味料市場でシェアを伸ばしているのが、低カロリーや虫歯になりにくい(非う蝕性)、腸内環境を整えるといった健康的付加価値のある新甘味料です。

低カロリーの新甘味料には、砂糖の200倍の甘さを持つステビアやアスパルテームなど、甘味が強く結果的に使用量が少量のためカロリーが抑えられるものと、糖アルコールのエリスリトールなど、体内で吸収・分解されにくいためにカロリーにならないものの2つのタイプがあります。エリスリトールは文字どおりノンカロリーです。

新甘味料は砂糖と異なり虫歯の原因菌に利用されませんが、糖アルコールのキシリトールでは、さらに虫歯の原因菌の活動を抑制する働きもあるといわれています。キシリトールは溶けるときに吸熱反応が起こるので、口の中で爽やかな冷涼感も得られ、ガムやキャンディーに利用されています。

消化吸収の際にブドウ糖が生成されない糖アルコールは、インスリンの分泌もないので、カロリーコントロールの必要な人のほか、糖尿病、肥満症用の食品に広く使われるようになっています。

日本での開発が進んでいるのが、フラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖系の甘味料です。ほとんど消化吸収されることなく腸に届き、ビフィズス菌など腸内善玉菌を増やす働きがあります。

甘いものを避けようとするとストレスが発生し、心理的にも負担が生じます。ダイエットやカロリーコントロールが必要な人にとって、甘味を楽しみながら健康な食生活を送れるこれらの機能性甘味料の登場は朗報といえるでしょう。

「今さら聞けない“甘味”のコト 第3回(全4回)」

人の生命活動のエネルギー源として重要な栄養素は、ブドウ糖です。ブドウ糖は、いわば自動車のガソリンに当たる人体の燃料で、血液中のヘモグロビンによって運ばれてきた酸素と反応して燃焼し、その際にエネルギーを生み出しています。 30_a

脂肪も燃焼されて運動のエネルギー源となりますが、神経細胞は細胞内にエネルギー源を蓄えておくことができないため、脳などのエネルギー源になるのは血液中から取り込むブドウ糖だけです。人体が消費するエネルギーの約20%を消費している脳は、ブドウ糖の供給がなくなると数分でその機能を失ってしまいます。

人体組織中には糖質はわずか3%以下しか含まれていないため、糖質は食物から摂らなくてはなりません。食物による摂取エネルギーの60%程度は糖質から摂ることが好ましいといわれています。

また、神経活動が行われる際にブドウ糖が使われることから、血中にブドウ糖が豊富にあると記憶力が増す、といった実験結果も報告されています。さらに、ブドウ糖や砂糖などの甘味物質は、鎮痛や快感作用の効果を持ち、ストレスを解消し安らぎを覚えさせてくれるといった報告もあります。

血液中のブドウ糖濃度である血糖値は、常に一定になるように保たれています。食事の直後にはブドウ糖が補給されるので血糖値は上がります。これを下げる働きをするのがインスリン。血液中に増えたブドウ糖に反応して、膵臓から分泌されるホルモンです。

このインスリンを膵臓が適正に分泌できない、あるいは、インスリンが正常に機能しなくて、血糖が恒常的に高くなるのが糖尿病です。糖尿病は、生活習慣病の代表的な疾患で、過食や運動不足などが要因と考えられています。

食後の血糖値の上昇を示す指標をグリセミックインデクス(GI/Glycemic  Index)と呼びます。この値が低い食品ほど食後の血糖が上昇しにくく、糖尿病を起こしにくいといわれています。グリセミックインデクスの値を見ると、砂糖はそれほど高い値ではないことが分かります。

糖尿病や肥満によるさまざまな症状を持つ人でなければ、砂糖の摂取をきびしく制限する必要はないようです。

ただし、甘いものばかりを食べると、血糖値が上昇して満腹感は得られますが、他の食べ物が食べられなくなるので、必要な栄養素を摂取できなくなってしまう恐れがあります。

糖質が有効にその機能を発揮するのはたんぱく質やビタミン・ミネラルなどが補強し合った時。糖質以外の栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

「今さら聞けない“甘味”のコト 第2回(全4回)」

砂糖は化学的にはショ糖と呼ばれ、ブドウ糖と果糖が結合したものです。ブドウ糖と果糖はそれ以上分解されない単糖類で、これが結合したショ糖は二糖類に分類されます。単糖類が数個結合したものをオリゴ糖、単糖類が多数結合したものを多糖類といいます。一般的に単糖類、オリゴ糖は甘味がありますが多糖類には甘味がありません。 29_a

糖類は種類によって、甘味の強さ、甘味を感じる時間の長さ、温度による変化に違いがあります。砂糖は温度にかかわらず甘さがほぼ一定ですが、果糖は低温では甘く、高温では甘さが減少します。フルーツを冷やして食べると甘さが増しておいしくなるのはそのためです。

日本料理で砂糖は、甘辛く煮込んだお惣菜や照焼き、三杯酢、すき焼、酢飯など、なくてはならない調味料です。西洋料理では砂糖はあまり使われませんが、お菓子やジャム作りなどには欠かせません。

さまざまな料理で砂糖が使われるのは、単に甘味をつけるのだけが目的ではありません。甘味には、他のどの味とも調和し、多様な味を作り出す性質があるためです。醤油と砂糖の甘辛い味付けは、砂糖の甘味が塩味の刺激を適度に緩和します。甘味と酸味は、お互いの味を緩和させ、穏やかで柔らかい甘さと酸味の味になります。

また、日本料理では表だって甘味を感じさせることなく隠し味として砂糖を使うことで、独特の風味と奥行きを作り出しています。

甘味は、味の強弱の許容範囲が広いことも特長として挙げられます。たとえば、おいしいと感じられる塩分濃度は、すまし汁で0.6~0.8%前後の狭い範囲ですが、砂糖は、隠し味に少量使うものから、3~10%程度の煮物、さらに大量に使う煮豆や餡などまでおいしく食べられます。

こうした甘味の特長が調味料としての砂糖の利用価値を高めているのです。

砂糖が多くの料理や加工食品に利用されているのは、味だけではなく、砂糖に溶解性・吸水性・保水性・加熱変化など物理的・化学的なさまざまな特性があり、その特性が料理や食品のおいしさに役立っているためでもあります。

砂糖の保水性は、腐敗を防止するほか、デンプンの老化防止や油脂の酸化防止にも役立っています。保存食品であるジャムには砂糖は欠かせません。それは防腐効果があるためだけでなく、砂糖が果物中のペクチンをゲル化してゼリー状に固めるからです。

照焼きなどの調理では、砂糖が加熱によってアメ状になって照りができ、おいしそうな焼き色も生み出します。砂糖は加熱によってその状態が変化し、約105℃で粘性を帯びたシロップ状になり、130℃ぐらいからアメ状になり、さらに150℃ぐらいになると褐色にカラメル化します。照焼きなどでは、醤油に含まれるアミノ酸とメイラード反応を起こして、茶褐色の焼き色と香りが醸し出されます。

その他にも砂糖には、イーストの醗酵を促進したり、乳化を促進し泡立ちを保持する働き、たんぱく質の凝固抑制作用など、さまざまな性質があります。これら砂糖独特の性質は、お菓子作りをはじめ、さまざまな食品加工に利用され、食生活に潤いをもたらしています。

「今さら聞けない“甘味”のコト 第1回(全4回)」

甘味は万人に最も好まれる味。そして、甘さを生み出す砂糖は、さまざまな料理や食品に使用され、多様な味の世界を生み出しています。しかし、一方では、健康志向やダイエット願望から、甘味や砂糖に対してマイナスイメージも存在します。改めて、甘味や砂糖が、食品のおいしさにどのような影響を与えているのか。健康とどのような関係があるのかを探ってみました。 28_a

甘味は年齢、人種、性別を超えてだれにでも好まれる味です。子どもにとって甘いものイコールおいしいものであり、大人でも疲れたときには甘いものが欲しくなります。それは甘味が、消化吸収が速くて即効性のエネルギー源になる砂糖など糖類のシグナルになっているからです。

糖類は炭水化物とも呼ばれます。植物は、太陽のエネルギーを利用して、光合成によって炭酸ガスと水からデンプンなどの炭水化物を作ります。できた炭水化物は、多様な糖の形で、茎や根や果実に蓄えられて、植物の生命活動のエネルギーに利用されます。ジャガイモならデンプン、果物ではショ糖やブドウ糖や果糖、サトウキビの茎やテンサイの根にはショ糖としてたくさん蓄えられます。砂糖は、自然に存在するこのショ糖を取り出して純粋な結晶にしたものです。

ショ糖はさまざまな植物に含まれていますが、一般の家庭で使われる上白糖やグラニュー糖などの原料となるのはサトウキビとテンサイです。どちらが原料でも精製して出来る砂糖に変わりはありません。これらの砂糖は原料からショ糖の結晶だけを取り出したもので分蜜糖と呼ばれます。

黒砂糖の場合は製法が異なり、原料であるサトウキビの搾り汁からざっと不純物を除き濃縮したもので含蜜糖と呼ばれ、ショ糖以外の成分が15~25%含まれています。

砂糖は純度が高いほど上品でさっぱりとした甘さになり、他の成分が含まれるとかえって甘さが強まり風味が生じます。黒砂糖が強い甘味を持ち風味があるのはそのためです。

さまざまな種類の砂糖は、結晶の大きさの違いや甘さの違いを活かして、用途によって使い分けられます。

おしるこに塩ひとつまみ。甘みが増す2つの理由。

皆さん、寒くなってきましたね。 年末に向けて、いかがお過ごしでしょうか。 今回は、そんな寒い季節にぴったり。 「おしるこ」と味覚の話、です。

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おしるこに塩をひとつまみ入れると甘みが増します。

この甘み増強効果には、大きく二つの理由があります。

一つ目の理由は「対比」といわれる、

質の異なる刺激を同時に与えたときに一方の質の強度が強くなる現象です。

おしるこで「対比」を起こすには、塩をほんの少し入れたときだけです。

入れすぎると逆に甘みを弱めてしまいます。

「対比」はどんな味の組み合わせでも起こるわけではありません。

おしるこに酸っぱい味を加えても甘みは強くなりません。

また、質の異なる刺激を「同時」ではなく「続けて」与えても「対比」は起こります。たとえばはじめに食塩水を味わい、それから砂糖水を飲むと甘みが強く感じられます。これは「継続対比」といいます。

対して、同時に起こる対比を「同時対比」といいます。

「対比」のメカニズムはまだよくわかっていない部分も多いのですが、実験では舌ではなく脳のレベルで起こっている可能性が高いことが示唆されています。

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二つ目の理由は、

脳だけでなく受容体のレベルでも増強効果が生じているということです。

舌には味蕾があり、その中の味を感じる細胞には甘味受容体があります。

甘味受容体には砂糖などの分子が入るポケットがあります、

砂糖を甘く感じるのは、砂糖分子がこのポケットに入るからです。

食塩は受容体の形を若干変えます。

その結果、砂糖分子はポケットに入りやすくなり、甘みを強く感じるようになるのです。