味覚に関する知識

【研究者インタビュー】「味わいの認知科学」× 日下部裕子さん

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日下部 裕子 氏

プロフィール 1998年,東京大学大学院農学生命科学研究科修了(農学博士) 現在は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 食品健康機能研究領域 感覚機能解析ユニット ユニット長 専門:食品機能学、分子生理学

 

 当協会のカリキュラムである『他の感覚×クロスモーダル』は、味覚とそのほかの五感の感覚についての考察がまとめられた日下部先生の著書「味わいの認知科学」をベースとしており、今回は味覚および他の感覚についての話を中心に、伺いました。

 

・所属されている「感覚機能解析ユニット」とは、どのようなところでしょうか?

日下部: 感覚機能解析ユニットでは、味、香、見た目といった感覚とおいしさの関係、おいしさと生理状態の 関係を解明することで、おいしさがどのように健康機能に関わっているのかを科学的に明らかにする研究を行っています。

 

・具体的には、どのようなことを行っているのでしょうか?

日下部:  大きく3つの研究を行っています。①味を受け取る仕組みと味の感受性、生理応答との関係解明、➁ 食品のおいしさに関する味と匂いの研究、③食に関する心理学的研究、です。中でも、私は①味を受け 取る仕組みと味の感受性、生理応答との関係解明を中心に研究を進めています。

「味」という感覚は、味覚受容体というセンサータンパク質が味物質を感知するところから始まります。受容体が受け取った味の情報は、そのまま脳まで伝わるのではなく、香りや見た目といった外的環 境、体調のような内的環境で大きく変化します。私たちは、これまで、味覚受容体がどのように味物質 と結合して味の情報を受け取るかについて研究を進めてきました。この成果を活かして、味覚受容体の 活性と実際に頭で感じる味の強さや生理応答との関係を明らかにしていきます。

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 著書「味わいの認知科学」に関して

 

・出版に至るまで、大変だったことがあればお聞かせ下さい。

日下部: この本は、企画段階から執筆活動を含め、約2年を経て出版となりました。その間、編集や構成の 方、科学系ライターの方など、多くの方のサポートを頂きました。私は研究者ですので、どうしても専 門用語を多用してしまったり、複雑な表現をしてしまったりすることが多かったように思えます。サ ポートして頂いたおかげで、より読みやすく伝わりやすい書籍へと近づくことができました。

 

・近い将来、「脂味」は“第6の味覚”に加わることになりますでしょうか?

日下部: それは難しいと思います。基本五味とは違って、脂味は、「コク」に近いものではないかと考えてい ます。コクは、広がりがあり、持続性があることの2つが条件となり、確かに味蕾に受容体があるので すが規則性を持って存在しているわけではありません。脂味も同じような感じで、広がりと持続性とい う条件をもちながら、やはり味蕾に規則性を持って存在していないので、近いうちに第6の味覚として 認定される、という可能性は低いと思います。

 

・高齢になるにつれ、何でも薄味に感じてしまうのは何故でしょうか?

日下部: 一般的には、味を感じとるセンサーの役割をする舌の表面にある味蕾の数が減少していくため、味覚 が鈍くなると言われているかと思います。この点については、データの裏付けがまだ非常に少なく「高 齢になると味蕾が減る、とは言い切れない」というのが実情です。ただ私は、それ以上に、「嗅覚」の 衰えの方が大きいのではと考えています。風邪を引くと、なんだか味を感じにくくなりますよね。「味 わい」に関して、嗅覚の役割は非常に重要なんです。

 

・味覚ではなく嗅覚で「味わっている」例を教えて下さい。

日下部: 例えば、最近発売され話題になった、コーラ風味の炭酸水。飲んでみると、確かにコーラのような味 わいがするのですが、原材料の欄には、「水、炭酸、香料」の記載のみです。砂糖すら入っていないん です。それでも、コーラのように味わえてしまうのは、香料が、その風味を演出しているからです。意 識していないと気がつかないと思うのですが、そういった商品は市場に多く見られます。

 

・味覚と嗅覚、2つを比べた場合、それぞれの特徴を一言で表すなら?

日下部: 難しい質問ですね(笑)。ただ、あえて一言で表すのであれば、「嗅覚」は意識的なもの、「味覚」は 無意識的もの、ですかね。嗅覚はそれが何かを意識的に判別し、味覚は満足感を無意識に得る。“味わう”という状況における両者の役割としては、そのようになるかと思います。 また“味わう”という状況において、(清潔を重んじる傾向のある)日本人は嗅覚、味覚、その次にくる 視覚も無視できないかもしれません。香りや味がいくら良くても、見た目の悪いものを手にしたり口に 入れるには、抵抗を感じる方が非常に多いように思います。

 

・脳内では、「美味しさ」をどのように処理しているのでしょうか。

日下部: それは、本当に難しいテーマでして、現在も様々な研究によって、少しずつ解明が進んでい る段階です。基本五味というのは、ちゃんと脳に感じる場所があります。そして最近では、味 +「おいしい」あるいは「まずい」と感じる場所が脳にありそう、といわれはじめています。 これはあくまでも私の仮説なのですが、「おいしい」「まずい」は色でいうと明度のような役 割を果たしているのではないかと思っています。基本五味が、赤、黄、青、黒、白、のような5 色だったとして、「おいしい」と色が明るくなったり、「まずい」と、暗くなる、というよう に。光と似たような、信号という形で、美味しさは味わいに影響しているのではないでしょうか。

 

・最後に、「味わい」に関わる研究で大変な点を教えて下さい。

日下部: 「味わい」には、動物的な部分と人間的な部分が入り混じっている点が、研究の魅力でもあ り、大変なところでもあります。食べられるものかを判別する動物的な感覚と、その味を過去 の記憶や思考と結びつけるような人間的な感覚。その2つが、どこで、どれくらいまで影響し あっているものなのか。さらにそこに“やみつき”みたいな要素も入ってくるとまた難しくなりま す。“やみつき”は依存症にもリンクする他からの介入ですが、これは脳の報酬系と関わってくる ので動物的な感覚にも人間的な感覚にも通ずる要素。こうした複雑な絡みあいの中からある程 度のアタリをつけて、検証を進めていくというのは大変ですね。

もう1点挙げるとすれば、ヒトからのデータを集めることです。一定数の参加者を募るための書類上の手続きであったり、環境の管理であったり。参加者全員の食べるものまでを厳密に 制限して管理するということは、非常に難しいです。こっそり何か食べてしまうと、結果に直 結してしまうことも少なくないので。ラットを用いた研究は多いのですが、ヒトのデータが少 ないのは、そのためなんです。

【一般受講生の募集】2016年4月6日(水)17時 締め切り

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■4月14日(木)・15日(金)開催「味覚カウンセラー養成講座 2期生」に関しまして 早割募集に関しましては、 ご好評につき、締め切らせて頂きましたが、 一般の受講生につきましては、引き続き募集を行っております。

 

■応募から受講までの流れ

・応募方法:下記アドレスよりお申し込み下さい。

メールの件名には、【一般受講申し込み】とご記入下さい。

mikaku.counsellor@gmail.com

・【締め切り:2016年4月6日水曜17時

・お振込み:メールを確認後、当協会の口座へすみやかに入金をお願い致します。 ※入金をもって、申し込み完了となります。 入金確認後に、当協会より受付完了通知をメールで送信いたします。

(残り 8席 6席    となります)

多数のご応募有難うございました。締め切らせて頂きました。

※講座最低開催人数は3名様となります。 開催1週間前に(4月7日木曜までに)基準の人数に満たない場合は、 開催を中止する場合がございますので、ご了承ください。

夏を乗り切るために。知っておくべき“苦味”のコト 第5回(全5回)」

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野菜や山菜の適度な苦味や渋味・えぐ味もまた、食品独自の味であり、食品の風味上欠かせないものです。

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ちなみに、渋味とは舌粘膜の収れんによる物理的刺激で、化学的刺激である苦味とは味の種類が異なるものです。

「えぐ味」は苦味と渋味を混ぜたような、特に不快な味を指します。

野菜や山菜に含まれる苦味や渋味・えぐ味や褐変を起こす色素などを一般にアクと呼びます。調理の際にはアク抜きを行いますが、アクも食品が持つおいしさの要素です。苦味や渋味・えぐ味を完全に取り去るのではなく、おいしく感じる程度に残すようにあく抜きすることが大切です。

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苦味は一般に好まれにくい味だけに、以前から、薬品や加工食品の苦味を抑制する研究は行われてきました。しかし、甘味やうま味などの好まれる味に比べ、苦味自体の嗜好性の研究例は多くありません。

それでも最近では、苦味は成人の食嗜好性を考える上で重要な味として注目され、「究極の味」とも言われるようになってきています。

また、苦味成分から生活習慣病を予防するなど人体に有用な生理活性作用がつぎつぎに明らかになっています。苦味物質は、人体に必須の栄養素ではないため、摂らなくても生きていけます。

しかし、人間は苦味を取り入れることで生活に潤いをもたらし、味覚の世界を豊かにしてきました。苦味は人間だけが楽しむことのできる味です。苦味も含めた、幅広いおいしさの世界を味わいたいものです。

 

夏を乗り切るために。知っておくべき“苦味”のコト 第4回(全5回)」

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43128b0464fcf9a3978ce4fb23676b81_s お茶や赤ワインに苦味や渋味をもたらしているのはポリフェノールの仲間のカテキンで、動脈硬化など循環器での疾病の防止や、癌に対する予防的効果などがあると大きな話題になりました。

最近、ホップに由来するビールの苦味成分であるイソフムロン類にも、広範囲な生活習慣病に効果があることが分かってきました。

 

 

 

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チョコレートのほろ苦い味は、テオブロミンによるものです。

テオブロミンはカフェインによく似た物質ですが興奮作用がマイルドで、精神状態をリラックスさせる効果があります。

カフェインに記憶力をアップさせる効果があることが報告されていますが、テオブロミンにも集中力を促進させる作用があり、記憶実験でチョコレートを食べたグループの方が解答率が高いという結果が出ています。

近年、チョコレートの主成分であるカカオに含まれるポリフェノールには、抗酸化作用、動脈硬化の予防、抗ストレス効果などがあることがつぎつぎに報告されています。

 

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気分を変えたい時やストレスから開放されたい時に、コーヒーやお茶、チョコレートなどの苦い嗜好品が欲しくなるものです。

無意識に身体が、苦味物質がもつ生理的作用を望んでいるのでしょう。

調査によると、ヒトが何らかのストレスを受けた後には、苦味の感受性が低下し、苦味のある食品をおいしいと感じる傾向があります。

 

また、食に対する興味や関心が強いほど、食品の苦味を好む傾向も強くなり、ストレス解消の手段として苦味をより求めるようにもなるとも言われています。

 

 

夏を乗り切るために。知っておくべき“苦味”のコト 第3回(全5回)」

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 うま味の呈味成分は主にアミノ酸や核酸、塩味が塩類、酸味が酸と、種類が限られているのに対し、苦味を感じる苦味物質には多くの種類があります。植物に含まれる代表的な苦味物質にアルカロイド類があります。 これらの大半は、神経に作用する毒性あるいは生理作用があります。

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 身近なものではコーヒーやお茶の中のカフェイン、カカオ豆に含まれるテオブロミン、たばこのニコチンがこの仲間で、主にその生理作用が活用されています。

これらは、多量に摂取すれば有毒ですが、適度な量なら緊張を緩和させたり、逆に神経を興奮させて眠気を防止したり、気分転換や思考力を回復させます。

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 コーヒーは、13世紀にアラビアでコーヒー豆を焙煎する方法が発見されて以来、独特の香ばしい香りを楽しむ世界的な飲料となりましたが、それ以前は、豆をそのまま煮出して飲んでいました。

嗜好品というより覚醒用に用いていたといいます。お茶もはじめは薬用として使われていたといわれます。

 

苦い野菜の代表といえば、ニガウリとも呼ばれるゴーヤーです。

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独特の苦味は、ウリ科の植物に含まれるククルビタシンの仲間、モモルデシンによるものです。ククルビタシンには抗がん作用があることが知られていますが、モモルデシンにも血糖値を下げる効果や、健胃作用、食用増進作用があるといわれています。

つい最近まで、ゴーヤーは沖縄や九州のローカルな野菜でしたが、夏バテに効く健康野菜として、いまでは全国区の野菜になっています。

 

 

夏を乗り切るために。知っておくべき“苦味”のコト 第2回(全5回)」

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ビールやコーヒー・お茶・チョコレートなどのほろ苦さ、また、アユの塩焼きや、フキノトウなど春の山菜の苦味は、その食品の味に欠かせない要素です。 人間は長い間の食経験で、これらの苦い食品を楽しむ習慣を培ってきました。

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人間がおいしさを判定する要因には、食べ物の特性や生理状態・心理状態のほかに、背景要因として知識・経験も大きく作用しています。

ふだんは意識することはありませんが、食品の前提条件は、食べて安全であることです。「親がおいしそうに食べている」というのは、子どもにとって重要な情報です。

安全であることがわかれば、親の食べる苦味のある食品にも、子どもは手を伸ばすようになるのです。

そうした食経験の積み重ねが成長とともに嗜好を形成し、大人になると、苦い食品でもおいしいと感じられ、好んで摂ったりするようになるのです。

「苦味は大人の味」と言われる由縁です。

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苦味のある食品や飲料は成長過程で嗜好が獲得され、習慣性を伴うものも多く見られます。

継続して摂取することで苦味に対する嗜好を獲得することは、実験によっても確認されています。

 

 

夏を乗り切るために。知っておくべき“苦味”のコト 第1回(全5回)」

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「苦味」はビールやコーヒーなどの嗜好品や、珍味などには欠かせない味の要素です。「大人の味」といわれる苦味には、最近、さまざまな効用があることが分かってきました。

今回は、苦味をめぐるおいしさの世界を、探ってみました。

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「味覚」は、食べて有益なものかあるいは有害なものかを判別する、センサーの役割をしています。「甘味」、「塩味」、「酸味」、「苦味」、「うま味」のことを基本五味と呼びます。

このうち、「甘味」はエネルギー源である糖、「うま味」はたんぱく質、「塩味」はミネラル、「酸味」は有機酸への反応に基づく知覚です。

「甘味」、「塩味」、「うま味」は人体に不可欠な栄養素の存在を知らせるシグナルですが、「酸味」は腐敗のシグナルとしても働き、「苦味」の場合は多くの毒物が苦いことから、食べてはいけない有害物のシグナルとして機能しています。

そのため、酸味と苦味は不快な味と感じられ、本能的に避けられるのです。

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 味を感知できる最低の濃度を閾値といいますが、「苦味」の閾値は他の味に比べてはるかに低い値です。

食物を口に入れたとき、ごくわずかな量でも敏感に苦味を感知することで、毒物の摂取をさけることができるようになっているのです。

春から学ぼう!“酸味”のコト 第5回(全5回)」

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【まとめ】

 人はなぜ、酸っぱさをおいしく感じるのでしょうか。それは、酸味の正体である酢酸やクエン酸などの有機酸が、人体にとってエネルギー代謝を促進する有益なものだから、と考えられます。

 

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 有機酸には、摂取した栄養物を効率よく分解する働きがあり、消化・吸収を促進し、栄養物の利用効率を高めてくれます。

 また疲労の原因となる、筋肉内に溜まった乳酸を取り除く作用もあります。気温が高くてエネルギーを消費しやすいときや、激しいスポーツをして疲れたとき、酸っぱいものを欲しくなるのは、このような理由からです。

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食欲がないときでも、酸っぱい梅干しやさっぱりした酢の物で食が進みます。

酢には食欲を増進する働きがありますが、それだけでなく、血中コレステロール値を下げ動脈硬化の予防に効果があることや、血圧を下げる、食後の血糖値を下げるなど、健康維持のためにプラスの効用がいくつもあることが報告されています。

また、酢とカルシウムを一緒にとるとカルシウムの吸収率を高めることが報告されているほか、酸味の刺激が緊張を緩和しストレスを和らげる作用を持つともいわれます。

これだけの効果のある酢。

うまく活用して、健康に役立つ食生活をおくりたいものです。

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春から学ぼう!“酸味”のコト 第4回(全5回)」

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酢には酸味や風味だけでなく、食品の保存性を増したり、変色を防止したり、たんぱく質を固めるといった多くの性質があり、調理の場面でさまざまに活躍をしています。

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酢の持つ強い殺菌力は大昔から知られ、古代バビロニアですでに食品を長期保存するためにピクルスが作られていたといわれます。

酢の中では食中毒菌は5分で死滅。2%の酢を添加したおにぎりには8時間の防腐効果が認められるといった研究報告もあります。酢を7~10%加える鮨飯ではさらに保存がきくことになります。

酢の強い抗菌作用は、酸とともに主成分の酢酸の働きが微生物の活動や繁殖を防いでいるといわれます。

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魚を酢洗いすると、表面についた細菌の増殖を抑制するとともに、魚の臭み成分であるアミン類に酸が反応して臭みも消えます。魚を煮るとき酢や梅干しを入れるのも生臭さを消すためですが、酢には肉や骨を柔らかくする働きもあります。

コハダやサバなど魚を塩じめしてから酢に浸す「酢じめ」では、魚の肉質に独特の食感が生じます。この「酢じめ」は、たんぱく質が酸によって変性するとともに、酸性酵素がたんぱく質を分解することによるものです。ただ、酢だけでは身くずれしてしまうので、最初の十分な塩じめが欠かせません。

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野菜や果物に含まれる物質(ポリフェノールやチロシン)は酵素の働きで酸化し、褐変する性質がありますが、酢でpHを下げれば酵素の働きを抑えることができます。

酢は味としての酸味を楽しむだけでなく、料理の下ごしらえにもさまざまな働きをする優れものの調味料なのです。

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春から学ぼう!“酸味”のコト 第3回(全5回)」

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 味加減のことを「塩梅(あんばい)」といいますが、これは塩味と酸味(梅の酸味)のこと。古来より、酸味と塩味との調和がおいしさの大切な要素だったのです。

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酸味と塩味や甘味はお互いの味を和らげる効果があり、調味の隠し味として酸味(酢)は重要な役割を果たします。

実際には砂糖が多量に使われている料理でも酸味が加わることで食べやすくなり、逆に酸味が強い料理に甘味が加わると酸っぱさが和らぎます。

甘酸っぱい料理は、お互いの味の魅力を引き立てあっているのです。また、多くの清涼飲料水では、甘味とともに酸味がつけられ、清涼感を醸し出しています。

 

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 酸性の度合いを表すものにペーハー(pH)があります。7が中性、7より小さければ酸性、大きければアルカリ性です。

 

どんな食品にもそれぞれに固有のpHがありますが、一般に、おいしく感じられるのは弱酸性のpHが4~6の間で、pH8になると味がぼやけ、pH3になると酸味を感じるようになるといわれています。

酢のpHは2.5~3.5、レモンやスダチやカボスなど料理に使われる酸味の強い柑橘類の天然果汁もpHは2.5前後と強い酸性です。これらを料理に少量加えることで、料理全体のpHが下がり、驚くほど味がしまって感じられるのです。

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ところで、食品にはさまざまな色素が含まれていますが、天然色素の多くは酸やアルカリによって色が変化し、食品の見た目に大きな影響をおよぼします。

梅漬けで使うシソの葉は梅酢で真紅になり、ミョウガやショウガを甘酢に漬けておくと美しいピンク色になります。これはアントシアンという色素が、アルカリだと青色、酸性だと赤色になるためです。

ほとんどすべての野菜に含まれるフラボノイドという色素は、アルカリ性では黄褐色、酸性では白色になります。カリフラワーを茹でるときに酢を入れると白く茹でることができます。

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春から学ぼう!“酸味”のコト 第2回(全5回)」

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 酢の主成分には酢酸、そのほかクエン酸やリンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸など多くの有機酸が含まれています。レモンや梅干しの主成分はクエン酸で、これらの有機酸類が独特のすっぱさ、酸味の正体です。

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酢に最も多く含まれる酢酸は、酢酸菌によりアルコールが酸化されて生じます。酢は酒の歴史とともに誕生したといわれ、酒の原料になるような糖質を含んだ食品であれば、酢の醸造も可能です。英語のヴィネガー(vinegar)は、フランス語のビネーグル(vinaigre)が語源で、vinはワイン、aigreはすっぱい、つまり「お酒がすっぱくなったもの」という意味なのです。

世界各地にさまざまな酒があるように、それぞれの酒に対応して酢が発達しています。日本では米から作った米酢が一般的ですが、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどワインの産地ではワインビネガーが、ールの本場イギリスやドイツでは麦芽汁から作るモルトビネガー(麦芽酢)が、アメリカではシードルビネガー(りんご酢)が中心です。 

 

日本では近年になって脚光を浴びるようになったバルサミコ酢は、ワインビネガーと同じくぶどうが原料ですが、濃縮果汁を用い数年の樽熟成によって生まれる独特のフルーティな芳香とまろやかな酸味や甘味が特徴です。

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どの酢にも共通する主成分の酢酸は、揮発性がありそれ自体に香りがあります。さらに酢の原料となる食品の酢酸以外の有機酸やアミノ酸の含有量の違いにより、できあがった酢自体の風味は大きく異なってきます。それぞれの風味の特徴を生かして、料理によって使い分けられています。

酢は塩や砂糖と同じ基本調味料の1つですが、これらと大きく異なることは、特徴的な豊かな香りがあることです。

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「春から学ぼう!“酸味”のコト 第1回(全5回)」

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 独特の酸味がさわやかな食味を生み出す酢は、その多様な働きから調理の過程でさまざまに活用されていますが、最近ではその健康効果が注目されています。酸味と酸味調味料「酢」が作り出すおいしさの世界を探ってみました.

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 伝統的な日本料理の「なます」は魚介類などを刻んで二杯酢などで和えたもの。海外でもすっかりポピュラーな寿司は、魚介類と酢飯との組み合わせです。

長く肉食の習慣のなかった日本では、魚介類が一番のごちそうとして尊ばれました。そのため、魚介類の生臭さを消したり、保存性を増すなどのさまざまな働きを持つ酢が、魚介類の加工や調理の際に経験的に利用されてきたのです。

また、酢は酢味噌や二杯酢、三杯酢、甘酢、土佐酢など、さまざまな合わせ酢にすることよって、淡白な味の日本料理に多様な風味を添えてもいます。

 

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 西洋でも、ヴィネガー(酢)は、スパイスや塩と並んで魚や肉料理に重要な役割を果たしている調味料であり、古くからピクルスなどの保存食に用いられています。また、サラダドレッシングをはじめマヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソースなど、各種ソース類のベースにも使用され、酢の酸味が味にアクセントを与え、保存性を高めてもいます。

洋の東西を問わずに幅広く調理に用いられている酸味調味料の酢ですが、スダチやカボスなどの果実の汁や梅干しの酸味なども多くの料理で利用されています。

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「きちんと学ぶ 味覚の基本 第3回 (全10回)」

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Q.1 甘味と苦味。甘味に関して人は鈍く、苦みに関しては非常に敏感に反応します。さて、甘味と苦味を比較して、苦味に関しては何倍以上低い濃度で感じるでしょうか。   

①5倍

②10倍 

③100倍 

④1000倍

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正解④

解説  

甘味より苦味は1000倍以上低い濃度で感じるようになっています。それはなぜでしょうか?苦味は毒物が持っている場合が多いと言われています。そのため体が自己防衛のためにわずかな濃度で苦味を感じ、危険信号をだしているのです。

Q.2 コーヒーやビール。もともと「苦味」は人が好んで摂取する味ではありません。けれども、コーヒーやビールは好んで飲まれます。これはコーヒーやビールに含まれる成分が、人に気持ちの良さを与え、そのことを学習するからと言われています。またある時に、コーヒーやビールを飲むと苦みがあまり感じられないと言われています。それはどんな時でしょうか?

①忙しいとき 

②悲しいとき 

③疲れているとき 

④楽しいとき

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正解③

解説  

同じ苦さの物を作業の前と後に食べてもらうと、後に食べた方が同じ苦味なのに、苦く感じないというデータがでています。これはストレスをかけると唾液の中にリン脂質という物質が増えることによります。リン脂質は味をマイルドに感じさせる働きがあるのです。

Q.3 五つの基本味は塩味、酸味、苦味、甘味、うま味と言われています。「酸味」は、すぐに口に広がり、すぐに消えてします。それでは、塩味、苦味、甘味、うま味の中で一番舌に残ると言われている味はどれでしょうか。次の四つの中から選びなさい。

①塩味 

②苦味 

③甘味 

④うま味

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正解④

解説  

どの味が残るかという実験は口に含んだとき、そしてそれを吐き出した時、その二つのプロセスで試験されます。その結果はうま味成分。メカニズムにはまだ謎が残りますが、舌の付け根にある受容体にうまみ成分が結合するとなかなか流れにくいことが原因の一つではないかと考えられています。

「きちんと学ぶ 味覚の基本 第2回 (全10回)」

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Q.1 食事をするとき、砂糖の量が多少多くても少なくても、人はあまり敏感ではありませんが、食塩の量に関して、人はかなり敏感です。これは体に対しての砂糖と食塩のある特徴のためと言われています。それはどのような特徴でしょうか。 ①砂糖は吸収しやすいが、塩分は吸収しにくいため。

②砂糖は多く摂取しても構わないが、塩分は多く摂取すると体に害があるため。

③砂糖は体に蓄えることができるが、塩分は体に蓄えることができないため。

④砂糖は体で生み出すことができるが、塩分を生み出す事はできないため。

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正解③

解説

砂糖はある程度体内に蓄積ができる物質です。けれども塩分は蓄積することができないためある一定量を定期的に摂らなくてはいけません。その一定量を味覚によってはかるため、体が必要とする塩分濃度0.9%以下だと、味が薄く感じ、0.9%以上だと塩辛く感じるのです。

Q.2 非常に酸っぱい物を食べるとき、人は口をすぼめてとがらせます。この反応の理由はなんでしょうか?

①体が酸の刺激に、瞬間的に拒否反応をしめすから。

②体が唾液を分泌させ、酸を中和しようとするから。

③体が酸に反応をし、神経が興奮するから。

④体が酸の刺激に、驚き、筋肉を硬直させるから。

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正解②

解説

酸っぱい物を食べた時には、顔の筋肉が収縮をし、独特の表情となります。この動きは口の中に唾液だまりをつくり、その事によって酸を中和させる働きも促します。

Q.3 昔の夏みかんはとても酸っぱい時代がありました。この夏みかんの酸っぱさを中和させるためにある物をかけて食べていたのですが、このある物はなんでしょうか。 

   

①重曹

②砂糖

③塩

④醤油

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正解①

解説

重曹に含まれる重炭酸イオンが、酸味のもとである水素イオンを中和するから。砂糖をかける場合もありますが、これは中和させて酸っぱさを変化させている訳ではありません。甘みを感じ、酸味が消えたように錯覚しているだけと言えます。

「きちんと学ぶ 味覚の基本 第1回 (全10回)」

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Q.1  すいかやおしるこなど、甘いものにひとつまみの塩をふりかけたり、入れたりすると、甘みが増すということを何と呼ぶでしょうか。 ①対照

②刺激

③対比

④逆転

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正解:③対比

解説

ひとつまみの塩を甘いものにいれることで、甘みが増強することを「対比」と呼びます。質の異なる刺激を同時に与えた時に一方の質の強度が強められる現象です。

Q.2 食事が終わった後に、デザートのような甘いものだったら食べられることを“別腹”と呼びます。この“別腹”の原因となる現象はなんと呼ぶでしょうか。

①変異的感覚満腹

②別味覚的空腹感覚

③感覚特異的満腹

④中枢麻痺的感覚

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正解③感覚特異的満腹

解説

食事の味付けの主たるものは、うま味、酸味、塩味などとなります。ある一定量食事をすることで、この味そのものに関して、満足し、順応してきます。つまり味覚的にある種の刺激、魅力のようなものを感じなくなります。このことを“感覚特異的満腹”とよびます。この味に対する順応“感覚特異的満腹”と全くことなる甘い物に関しては満腹した状態ではなくなるため、甘い物は美味しく別腹として食べることができるのです。

Q.3 砂糖と人工甘味料、どちらも甘く感じるのにはある分子中の構造をもっていることが理由の一つと考えられています。その分子中の共通構造の組み合わせで正しい物を選びなさい。

①水素供与基AH

②水素供与基AHと水素受容基B

③水素供与基AHまたは水素受容基B

④水素受容基B

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正解②水素供与基AHと水素受容基B

解説

砂糖、果糖、人口甘味料であるサッカリン、アミノ酸のアラニン。分子構造は全て違う甘味料ですが、同じように甘いのは、水素供与基AHと水素受容基Bを分子中に持っているからと言われています。ただ共通構造を持たないのにも関わらず、甘みをもつ物質も存在しており、全てがこの共通構造によるものという説明では足りない現状もあります。

「料理人なら知っておくべき“塩味”のコト 第4回(全4回)」

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世界には食物に自然に含まれる以外の食塩を全く摂取していない人々がいます。これらの人々の間には高血圧の人がほとんど見られず、加齢とともに血圧が上昇することもないことが明らかになっています。 35_a

世界各地で食塩摂取量と血圧を測定したところ、食塩摂取量が多い地域ほど平均血圧が高いという正の相関関係が見られます。

私たちの身体は、生理的には1日に1g程度の食塩があれば生きていけるといわれています。

先進国の多くでは実際の摂取量はその10倍以上。塩分を取りすぎると高血圧になるおそれがあると、日本はもちろん世界各国で1日の塩分摂取の目標値を設定し減塩を指導しています。

しかし、すべての人が食塩をとると血圧が上がり、減塩すると血圧が下がるというわけではありません。食塩の摂取量によって血圧が変動する、食塩感受性のある人と食塩感受性のない人がいることが分かっています。

ただし、食塩非感受性だからといって食塩を多くとっていいわけではありません。食塩は喉頭がんや胃がんに関係あると考えられており、がん予防のためにも食塩の摂取制限が勧告されています。

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ストレスは食塩に対する欲求を高めるため、現代社会のストレスの多さも塩分摂取増の要因と考えられます。極端な減塩はそれ自体がストレスになってしまいます。

新鮮な旬の食材を使う、酸味やだしをきかせる、味付けにメリハリのある減塩を行うなど、おいしく減塩を続けることが大切です。

人よって適塩は異なります。QOL(Quality of Life /生活の質)を高めるためにも、その人にあった塩の取り方で、豊かな食生活を送りたいものです。

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「料理人なら知っておくべき“塩味”のコト 第3回(全4回)」

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塩味をおいしいと感じられる許容範囲は他の調味料にくらべるとたいへん狭く、薄すぎると美味しくなく、濃すぎると食べられないほどに感じます。 34_a

一般に、体液の塩分濃度0.9%と同じ程度の塩分濃度が調理の基本とされており、お吸い物や汁物はこの濃度よりやや薄目の味付けします。煮物は塩分比率が高くなりますが、これはご飯と一緒に食べることを前提に調理するからで、実際、ご飯と一緒に食べると塩味は薄められてちょうどよい味付けになります。

また、塩は味付けだけでなく、他の味とのバランスでさまざまな効果を発揮します。たとえば、おしるこに少量の塩を加えると却って甘さが引き立っておいしくなる、コンブやかつお節で出汁をとるとき塩を少量加えると旨みが増す、などです。

このように旨みや風味などを強調させる作用を「対比効果」といいます。

さらに。

寿司酢には塩を加えますが、これは塩によって酢の酸味が抑えられるからです。「塩梅(あんばい)がよい」という言葉がありますが、これも塩によって梅干しの酸味がちょうどよくなったことをあらわしています。

このように塩によって酸味が抑えられることを「抑制効果」といいます。

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調理の順序は「サシスセソ」とよく言われます。

サは砂糖、シは塩で、これは塩のほうが砂糖よりも浸透速度が早いため、味のしみこみにくい砂糖が先、という意味です。

炒め物などでは、塩には野菜などの水分を吸い出す脱水作用があるので、水っぽくならないように最後に塩を加えます。

塩は味付けだけでなく、細菌の繁殖を抑え保存性を向上させる働きをはじめ、多彩な働きがあります。

食品の物性を変化させる働きもあり、たとえばカリフラワーやジャガイモを茹でる際に塩を入れると、野菜類の細胞膜を強固にしているペクチン酸カルシウムのカルシウムが塩のナトリウムと置換され、細胞が柔軟になるので、柔らかくゆでるこことができます。

かまぼこなどの練り製品では、塩のタンパク質溶解作用が利用され、アシと呼ばれる歯ごたえを生み出しています。粘りのあるパン生地やうどんづくりにも塩が活躍しています。

 

魚や肉に塩をかけて焼くとたんぱく質の凝固を早め、旨み成分が外に流れ出てしまうのを防ぎます。里芋の皮をむいたら塩もみして煮ると粘りが出にくくなるのも凝固作用の一つです。

これらのさまざまな働きによって、塩は調理や食品加工に欠かせない存在となっています。

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「料理人なら知っておくべき“塩味”のコト 第2回(全4回)」

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塩の原料は主に海水と岩塩です。岩塩は大古の海水が蒸発して堆積したもので、もとをただせばやはり海水です。 33_a

塩の製造方法は大きく分ければ、

1)海水を太陽熱で蒸発させ、その塩の結晶を得る方法、

2)海水などを濃縮し、それを釜に入れて煮詰める方法、

3)岩塩の採掘、

になります。

日本では塩の専売制のもと、1972年以来、ほぼイオン交換膜法という日本独自の方法で海水から作った高純度の食塩のみが生産・流通していましたが、1997年に塩の専売制度が廃止され、現在は自由な塩の製造販売が可能となり、輸入塩を含めてさまざまな塩が販売されています。

海水中のミネラル成分は3.5%程度。微量な元素まで含めると100種類以上の物質が含まれています。

 

そのなかで塩化ナトリウムは約8割弱、次に多いのが塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カリウムで、これらでミネラル成分の99.6%以上を占めます。

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塩化ナトリウム以外のミネラル成分は苦汁(にがり)といい、豆腐の凝固剤として知られています。

苦汁が多く含まれる塩を「ミネラルの多い塩」という言い方をしますが、そもそも塩はミネラルのかたまりです。

塩化ナトリウムは舌を刺すような塩辛さですが、マグネシウムは苦味、カルシウムは甘味、カリウムは酸味があり、塩の味にそれらの成分が影響します。

にがりはその名の通り苦味があり、含有率が多すぎると味が悪くなりますが、適度にふくまれていればむしろ塩をおいしく感じさせるのです。

 

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「料理人なら知っておくべき“塩味”のコト 第1回(全4回)」

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料理の決め手となる塩は、人が生きていく上でも欠かせない重要なものです。塩にはどのような性質・働きがあり、私たちの食生活に関係しているのか、改めて探ってみました。 32_a

生命は原始の海から発生したと考えられています。ナトリウム、塩素、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのイオンに満たされた海で誕生した原始生命体は、進化の道をたどり、やがてヒトが出現しました。

こうして誕生したヒトの身体は、約60%が水分です。このうち3分の2は細胞内に存在し細胞内液と呼ばれ、残り3分の1は血液と細胞間を満たしている体液で合わせて細胞外液と呼ばれます。

この細胞外液には、ナトリウムや塩素など海水にとても似た構成比の成分が含まれています。60兆個あるといわれる人間の細胞は、いわば細胞外液という海に浮かんでいるのです。

細胞外液と同じく、細胞内液にもミネラルが含まれていますが、細胞内液の主なミネラルはカリウムで、細胞外液の主なミネラルはナトリウムと塩素です。

これらのミネラルが常にバランスをとりながら細胞内外の浸透圧を調節し、浸透圧の作用で栄養が細胞内に取り込まれ、また反対に細胞内の老廃物を細胞外に排出しています。

細胞膜を通したこのような物質の循環によって身体は機能し、生命活動が維持されています。

細胞外液の水分量と浸透圧を一定に保つため、体内には常に200g近くのナトリウムと塩素、つまり食塩が保持されています。

浸透圧以外にナトリウムは、体液のpHを一定に保ち、神経の伝達、筋肉の収縮などにも関与しています。また、塩素は胃液中の塩酸の成分として重要な役割も担っています。

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「今さら聞けない“甘味”のコト 第4回(全4回)」

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「あまり甘くなくておいしい」という言葉が、ケーキやデザートなどに対するほめ言葉としてすっかり定着しています。最近は甘さ控えめがトレンド、それを裏付けるように、上白糖、グラニュー糖などの砂糖類は、市場規模の縮小傾向が続いています。 31_a

一方、家庭用甘味料市場でシェアを伸ばしているのが、低カロリーや虫歯になりにくい(非う蝕性)、腸内環境を整えるといった健康的付加価値のある新甘味料です。

低カロリーの新甘味料には、砂糖の200倍の甘さを持つステビアやアスパルテームなど、甘味が強く結果的に使用量が少量のためカロリーが抑えられるものと、糖アルコールのエリスリトールなど、体内で吸収・分解されにくいためにカロリーにならないものの2つのタイプがあります。エリスリトールは文字どおりノンカロリーです。

新甘味料は砂糖と異なり虫歯の原因菌に利用されませんが、糖アルコールのキシリトールでは、さらに虫歯の原因菌の活動を抑制する働きもあるといわれています。キシリトールは溶けるときに吸熱反応が起こるので、口の中で爽やかな冷涼感も得られ、ガムやキャンディーに利用されています。

消化吸収の際にブドウ糖が生成されない糖アルコールは、インスリンの分泌もないので、カロリーコントロールの必要な人のほか、糖尿病、肥満症用の食品に広く使われるようになっています。

日本での開発が進んでいるのが、フラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖系の甘味料です。ほとんど消化吸収されることなく腸に届き、ビフィズス菌など腸内善玉菌を増やす働きがあります。

甘いものを避けようとするとストレスが発生し、心理的にも負担が生じます。ダイエットやカロリーコントロールが必要な人にとって、甘味を楽しみながら健康な食生活を送れるこれらの機能性甘味料の登場は朗報といえるでしょう。